Stanza della Luna

雑多な詩集

Scrap and Build

私たちは 作らずにいられない

作り続ける私たちは

築き上げ 安住し 守ろうとする

 

でも壊すときが来る

壊されるときも来る

 

古びた何かを壊して

大事な何かを壊されて

 

時にもう 作れなくなる

 

一度は全ての

時間もエネルギーも注ぎ込んで

築き上げたモニュメントが

 

がれきになり

 

ただの更地に還り

 

草むらになり

 

 誰かがゴミを投げ捨てたりする

 

だけど

私たちは作らずにいられない

 

あるときは進化して

あるときは退歩して

 

私たちは作る

作り続ける

 

すすき

通りがかりのすすきは たいてい

シルバーゴールドに透けて

あたたかい色合いの光そのものと

見紛う

 

曇天の今日の 川原の土手に腰かけて

ながめる すすきの波は

白くて ふわふわして 鳥の羽のよう

少しの風に吹かれて

弱々しく手をふる 

ゆうれいのように見える

 

かさかさと

かすかな葉音を立てながら

 

うすぼんやりと 土手に腰かけて

私もまた 

ゆうれいのようにゆれているのかしら

 

この曇天の 今日の 川原で

 

迷宮入り

あなたのいる場所へ 続く道をたどって

歩き続けてきたつもりが

 

たどり着いたのは

ひとりぼっちの砂漠だった

 

ルパンを追う銭形警部みたいな恋に

本当はもう疲れてる

 

あなたと見たテレビの未解決事件は

もう犯人が捕まったのに

 

私の心は迷宮入りしかけてる

 

手がかりも 証拠も 何もなくて

時効もないの

キンモクセイの風

前を向いて生きていく!

そうやって過ごしてきた

 

キンモクセイの風

ふと振り返る

 

忘れたつもりの日々が

まだすぐそこにいる

 

なおりかけた傷から

まだ血がにじむほどに

 

甘く香るオレンジの小さな花

いくつの秋を見守ってきたの

 

苦しくて 悲しくて たまらなく孤独な

この痛みは 私の一部だと知る

 

光あふれる澄んだ青い空の下

また前を向いて歩き出す

コントロール

街角のカフェの入り口で

そよ風にゆれる観葉植物のグリーン

 

ほっとできる風景

 

無機質なコンクリートや金属だけでは

決してもたらすことのできない

優しい空間

 

人間が切り取って

飼い慣らした自然

人間が安らぐ

本物だけど

本物じゃない自然

 

故郷のジャングルに帰ったら

鉢植えの木はぐんぐん根を張って

鬱蒼と茂って

猛獣や毒虫のすみかにもなる

 

とても恐ろしい場所を作る

 

本物の自然はコントロールできない

本物の自然はとても恐ろしい

 

それでもコントロールされた自然に

人間は安らぐ

 

安らぐために

コントロールしようとする

ほんとうの宝石

凍りついた根雪が溶けるころ

白い花があちこちに咲き乱れる小さな町

 

夏にはそよ風が緑の葉を揺らし

秋には赤い果実が実る

 

その町の空は

山に切り取られた四角形

空の果ては見えない

 

何だか退屈で

少しうんざりした少年は

どこか遠く 

まだ見ぬ場所にきっとある

すごい宝物を夢見て 

ある日町を出た

 

曲がりくねった道を歩き続け

少年はやがて大きな町にたどり着く

 

そこには何でもあって

見たことのない食べ物や

夢みたいにきれいな色の飲みものや

お腹に響いてくるような音楽に

少年はときめいた

 

みんな楽しそうで

おしゃれな服を着て

にぎやかな通りを行き交うのを

少年はうっとり眺める

 

「ここで僕は 僕の宝物を探すんだ。」

 

 

ある日 少年は気づく

その町の空も

ビル群に四角く切り取られて

空の果ては見えない

 

「おまけにここは星も見えないんだね。

僕が生まれた町は・・・」

言いかけてやめた 

 

宝石みたいな街明かりが一晩中灯って

眠らない夜をさまよう人たちは

まるで魔法にかかったみたいに

笑いさざめいていたけど

 

次の日少年が通りかかった

昼間の裏通りは

薄汚れて、みすぼらしくて

まるで違う場所みたい

 

きれいにお化粧をして笑ってた女の人が

疲れた顔で窓の外をぼんやり見てる

 

解けてしまった魔法と引き替えに

彼女は何を犠牲にしたんだろう

 

少年はとても苦しくて

山に切り取られたあの小さな空が

たまらなく恋しくて

 

夜になったらまたたく満天の星

晴れたらどこまでも澄んだ青

優しい朝焼けや夕焼けがいっぱいに広がる

小さなあの空が恋しくて

 

曲がりくねった道を

少し疲れた足取りでたどり

少年はあの小さな町に帰って来たんだ

 

そこには何もないけど

小さく切り取られた空の端に

傾いた夕日が

夢みたいにきれいなオレンジで

赤く色づいた林檎の実を照らして

数え切れないほどの真っ赤な宝石が暖かな輝きを放っている

 

「僕の宝物 見つけた。」

 

少年が小さくつぶやくと

誰かの「おかえり」が聞こえたみたい

夏とスイカと麦わら帽子

少し古びたたたみに寝ころんで

おなかにバスタオルをのせてうとうとすると

目が覚めるころ庭先はセピア色に染まって

蝉の声が「もう夕方だよ」と大合唱してた

 

私より背の高いひまわりが

空を見上げてる道を

プール帰りに歩いていると

入道雲モクモク 雷ゴロゴロ

短い夕立がいつも熱をさらっていった

 

ちゃぶ台に三角のスイカ

塩なんてかけないほうがおいしいのになんて思いながら

時々うっかり種をのみ込んで

芽が出てきたらどうしようって気にしたっけ

 

ラジオ体操や

高校野球の音が聞こえてた

 

麦わら帽子かぶって

虫取りに行ったり

扇風機に向かって

「あー」って言ったり

ちっぽけだけど楽しい夏の思い出

 

冷房の効いた部屋で思う

 

あんな夏は今もどこかにあるのかな