Stanza della Luna

雑多な詩集

日常

日常は

打ち寄せる波のように

容赦なく押し寄せ

泳ぎ続けないと

のみ込まれてしまう

 

日常は

絶えず新たな難題を生み出し

得体の知れない魔物を生み出し

それと戦うために

夢を見る間もない

 

日常は

夜明けと共に世界を照らし

立ち止まりそうな時

それを許さない

 

進み続けるうち

私が背負う

途方もない悲しみは

いつのまにか

少しずつ 

少しずつ

小さくなっていく

 

日常は非情で

その分どこか優しい

 

日常は容赦なく

日常は優しい

 

あなたのいない世界

カーテンから差し込む光

ニュースを読むアナウンサーの声

ステンレスボトルに注ぐ紅茶の香り

まるでいつもと同じ朝

 

一人暮らす部屋の窓から見る

少しくすんだ空の薄い青

川辺を吹き渡る風の色

深くなる木々の緑も

全部いつか見たのと同じ

 

だけど、この世界にもうあなたはいない

 

駅前を行き交う人はいつもと変わらず足早で

制服姿の高校生達が笑い転げている

みんな気づいていないみたい

 

この世界にもうあなたはいないのに

 

何一つ変わってないみたいな世界に

私は立ちすくむ

 

あの場所に行っても もうあなたに会えない

あの番号にかけても もうあなたと話せない

あなたの愚痴を聞くこともないし

私の愚痴を聞いてもらうこともない

他愛のない話で見せる

あの笑顔を見ることもない

 

あなたのいない世界で

私は今までどおり生きる

今までどおりじゃない世界で

あなたが教えてくれたように

あなたが生きていたように

あなたが光を与えたように

 

私は生きて行く

うかれる権利

うかれて 傷ついて

落ち込んで 反省して

 

またうかれて 傷ついて

落ち込んで 反省して

 

そんなことを繰り返して

いつしか

傷つかないために

賢く臆病に生きる

術を身につけた

 

期待しなければ 

失望することもないもの

 

うかれる人が愚かに見えて

うかれる人が本当はうらやましくて

うかれたらまた傷つくのが恐くて

うかれるのが恐くて

 

傷だらけの私

うかれる権利がないから

うかれたらバチが当たるって思ってる

 

 

 

なくしものの国

なくしたものは 

さがしても、さがしても 

見つからないのに

 

ある日ひょっこり 

もう さがしたはずの場所から 

出てきたりする

 

まるで「ボクのありがたさがわかったでしょう?」と

私をこらしめたかったみたいに

 

きっと世界のどこかには 「なくしものの国」がある

 

いいかげんな持ち主に

忘れさられたもの 

ぞんざいに扱われたものたちが

 

「もう帰るものか」

「うんと困ればいい」

「せいせいした」

「ここは気楽でいいわ」

 

・・・なんて楽しげに暮らしてる秘密の場所

 

それでも さがしてほしくて

それでも みつけてほしくて

ほんとは もとの場所に帰りたくて

こっそり ため息ついたりしてるんじゃないかな

 

ある日 ひょっこり帰ってきた なくしものは

何事もなかったように装いながら

どこかまだ迷ってるようで

 

「ごめんね」って話しかけたら

「フンっ」て笑ったみたいな気がした

雨音

雨音が屋根をたたく

「もう冬も終わるよ」と地面をぬらす

 

わかってる 春は近い

でも あと少しだけ このままがいい

 

4月から あなたがいない場所で生きる

 

悲しみに耐える力を下さい

一人でもちゃんと 笑って生きていけるように

あなたがいない場所でも 私らしくいられるように

 

眠れないこんな夜は 

あなたが好きと言った歌を流す

 

やわらかな風に似てる

風のようなあなたに似てる

 

あなたからたくさんもらった 勇気抱いて

悲しみに耐える力に変える

 

だからあと少し あと少し必要

準備期間 

緑が芽吹くための

 

記憶の重さ

みんなが覚えてること

私だけが覚えてなかったり

 

私が覚えてること

みんなは忘れてしまっていたり

 

同じ時を 過ごしていても

思い出は 同じじゃない

 

価値観は 人それぞれだから

それは 当たり前だけど

 

私にとって 大切な思い出

あなたが忘れてしまったと 知ったとき

 

かなしくて

心の片隅が 

小さくひび割れた

 

記憶の価値観も 人それぞれで

大切じゃないことは きっと忘れてしまう

 

あなたにとって どうでもいいこと

私には とても大切な思い出でも

 

Open Sky

何万人もの人波が 

どこかの神社に 押し寄せるころ

 

こんな郊外の片すみで 

見渡す限り 誰もいない

 

道くさばかりしてる犬と散歩

 冬の野原は 暖かく 透明に 広がる

 

そして 少し視線を上げると

遮るもののない 青い空が

 

Open Sky 白い雲の筋をまとって

吸いこむようでもなく まぶしいわけでもなく

どこまでも 頭上に浮かぶ 青い空

 

つめたい空気を吸い込んで 

体のすみまで 酸素が流れ

 

滞りつづけた何かが

この空に溶けてくよう

 

道くさばかりしてる犬と散歩

冬のシンフォニー 音もなく どこにも 眠ってる

 

そして枯れた草には もうすぐ

春のみどり 芽吹く 光のつぶ

 

Open Sky 何も遮るものもなくて

吸いこむようでもなく まぶしいわけでもなく 

ふんわりと 頭上に浮かぶ 青い空