Stanza della Luna

雑多な詩集

stories

ある日電車の 同じ車両で会った 

とめどなく涙を流していた人

赤信号の 道の向こうで花を 

大事そうに抱えて待っていた人

 

私と関わりのないはずの 

遠い生活の一コマなのに

 

そんな風に 街のどの風景も 切り取ればそれぞれの物語になる

そんな風に 街のどの風景も 痛いほど 悲しみや喜びにあふれている

 

一人バス待つ 重い荷物の老婆 

真っ黒に日焼けした交通整備員

上着を脱いで空仰ぐ営業マン 

ギターケース背負って笑う少年

 

この手で受け止めるには 重く 

通りすぎるには よく似すぎている

 

そんな風に 街のどの風景も 切り取ればそれぞれの物語になる

そんな風に 街のどの風景も 痛いほど 悲しみや喜びにあふれている