愛しい空
少し淡く深くなった9月の朝の青
綿雲がふわふわと彩る空は
いつか見たヨーロッパの油絵
構図の半面に張り巡らされた
蜘蛛の巣のような電線は
完璧な自然に人間が施した
悪意のない暴力のよう
私はその空を見て
電線も電柱もない完璧な空を想像する
青はただ青く、淡く
雲はただ白く、たなびく
美しいけれど 現実味のないこの街
築き上げた全てがなかったことにされる原始
もう一度空を見る
蜘蛛の糸と同じ
生きるための
電線の向こうの空は美しく
電線が行きつく窓には
今夜も明かりが灯る
蜘蛛の巣のように張り巡らされた
私たちの便利
誰かが張り巡らしてくれた
私たちの暮らし
蜘蛛の巣のある景色は
蜘蛛の巣のない景色より
完全な自然より
愛おしい