Stanza della Luna

雑多な詩集

2018-01-01から1年間の記事一覧

おもちゃの家

土台だけの家は とても小さく見える あの小さなスペースで ご飯を食べたり テレビを見たり 遊んだり お風呂に入ったり 寝転がったり 勉強したり 掃除をしたり 服を着替えたりするんだ あの小さなスペースで 今日のことを話したり 未来のことを話したり 思い…

Scrap and Build

私たちは 作らずにいられない 作り続ける私たちは 築き上げ 安住し 守ろうとする でも壊すときが来る 壊されるときも来る 古びた何かを壊して 大事な何かを壊されて 時にもう 作れなくなる 一度は全ての 時間もエネルギーも注ぎ込んで 築き上げたモニュメン…

すすき

通りがかりのすすきは たいてい シルバーゴールドに透けて あたたかい色合いの光そのものと 見紛う 曇天の今日の 川原の土手に腰かけて ながめる すすきの波は 白くて ふわふわして 鳥の羽のよう 少しの風に吹かれて 弱々しく手をふる ゆうれいのように見え…

迷宮入り

あなたのいる場所へ 続く道をたどって 歩き続けてきたつもりが たどり着いたのは ひとりぼっちの砂漠だった ルパンを追う銭形警部みたいな恋に 本当はもう疲れてる あなたと見たテレビの未解決事件は もう犯人が捕まったのに 私の心は迷宮入りしかけてる 手…

キンモクセイの風

前を向いて生きていく! そうやって過ごしてきた キンモクセイの風 ふと振り返る 忘れたつもりの日々が まだすぐそこにいる なおりかけた傷から まだ血がにじむほどに 甘く香るオレンジの小さな花 いくつの秋を見守ってきたの 苦しくて 悲しくて たまらなく…

コントロール

街角のカフェの入り口で そよ風にゆれる観葉植物のグリーン ほっとできる風景 無機質なコンクリートや金属だけでは 決してもたらすことのできない 優しい空間 人間が切り取って 飼い慣らした自然 人間が安らぐ 本物だけど 本物じゃない自然 故郷のジャングル…

ほんとうの宝石

凍りついた根雪が溶けるころ 白い花があちこちに咲き乱れる小さな町 夏にはそよ風が緑の葉を揺らし 秋には赤い果実が実る その町の空は 山に切り取られた四角形 空の果ては見えない 何だか退屈で 少しうんざりした少年は どこか遠く まだ見ぬ場所にきっとあ…

夏とスイカと麦わら帽子

少し古びたたたみに寝ころんで おなかにバスタオルをのせてうとうとすると 目が覚めるころ庭先はセピア色に染まって 蝉の声が「もう夕方だよ」と大合唱してた 私より背の高いひまわりが 空を見上げてる道を プール帰りに歩いていると 入道雲モクモク 雷ゴロ…

新しい一歩

あなたがいなくなってしまって 無意識に私は 立ち止まっていたんだね 季節の中の一つひとつのかけらに 全部あなたがいるから 違う花が咲くたびに あなたに話したくなったりして 変わらない世界から あなただけが消えてしまったことに茫然として 気づけば同じ…

日常

日常は 打ち寄せる波のように 容赦なく押し寄せ 泳ぎ続けないと のみ込まれてしまう 日常は 絶えず新たな難題を生み出し 得体の知れない魔物を生み出し それと戦うために 夢を見る間もない 日常は 夜明けと共に世界を照らし 立ち止まりそうな時 それを許さな…

あなたのいない世界

カーテンから差し込む光 ニュースを読むアナウンサーの声 カップに注ぐ紅茶の香り まるでいつもと同じ朝 一人暮らす部屋の窓から見る 少しくすんだ空の柔らかな光 川辺に揺れる草の波 深くなる木々の緑も 全部いつか見たのと同じ だけど、この世界にもうあな…

うかれる権利

うかれて 傷ついて 落ち込んで 反省して またうかれて 傷ついて 落ち込んで 反省して そんなことを繰り返して いつしか 傷つかないために 賢く臆病に生きる 術を身につけた 期待しなければ 失望することもないもの うかれる人が愚かに見えて うかれる人が本…

なくしものの国

なくしたものは さがしても、さがしても 見つからないのに ある日ひょっこり もう さがしたはずの場所から 出てきたりする まるで「ボクのありがたさがわかったでしょう?」と 私をこらしめたかったみたいに きっと世界のどこかには 「なくしものの国」があ…

雨音

雨音が屋根をたたく 「もう冬も終わるよ」と地面をぬらす わかってる 春は近い でも あと少しだけ このままがいい 4月から あなたがいない場所で生きる 悲しみに耐える力を下さい 一人でもちゃんと 笑って生きていけるように あなたがいない場所でも 私らし…

記憶の重さ

みんなが覚えてること 私だけが覚えてなかったり 私が覚えてること みんなは忘れてしまっていたり 同じ時を 過ごしていても 思い出は 同じじゃない 価値観は 人それぞれだから それは 当たり前だけど 私にとって 大切な思い出 あなたが忘れてしまったと 知っ…

Open Sky

何万人もの人波が どこかの神社に 押し寄せるころ こんな郊外の片すみで 見渡す限り 誰もいない 道くさばかりしてる犬と散歩 冬の野原は 暖かく 透明に 広がる そして 少し視線を上げると 遮るもののない 青い空が Open Sky 白い雲の筋をまとって 吸いこむよ…

さんぽみち

1月の川原沿いを ぶらぶらと歩く 枯れ草の間を 深い青が 細く流れる 見上げた空は 雲一つなくて 強い風に ゆられて 光の 青い波長が あふれてる ぶらぶらと歩きながら 遠くを見て 深呼吸してみる 優しい麦わら色の 1月のさんぽみち